運動誘発アナフィラキシーって何??普通のアナフィラキシーと何が違うの??
小児科医として勤務しているdoctorKKと申します。
今回は『食物依存性運動誘発アナフィラキシー』についての記事です。
<目次>
食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis, FDEIA)は、原因食物の摂取単独または運動負荷単独では症状が出現せず、原因食物摂取後の運動負荷によってアナフィラキシーが誘発される疾患です。
分かりやすく表現すると、特定の食物を摂取した後に運動すると、アナフィラキシーになってしまう疾患です。
(厳密には異なりますが、ここでは分かりやすくこのように表現します。)
定義の詳細については下記ガイドラインをご参照ください。
一般的な食物アレルギーによるアナフィラキシーとの違い
アナフィラキシーについてあまり聞いたことがない方は下記の記事を参考にしてください。
通常のアナフィラキシーと大きく異なるのは、原因食物の摂取のみでは症状が出ないが、運動することによって症状が誘発されるという点です。
運動により腸管上皮の透過性が亢進してアレルゲンの吸収が促進されるためと考えられています。
出現する症状については通常のアナフィラキシー同様に、皮膚症状や呼吸器症状などがみられ、ショック症状になってしまうこともあります。
原因食物
原因食物としては、小麦製品(6~7割)、甲殻類(2~3割)が大部分を占めます。
しかし、その他の食材でも症状が出現する可能性があり、詳細な問診が重要です。
発症時の運動について
原因食物を摂取後に、球技やランニングを行うことで症状が誘発されます。
そのため、学校で給食を食べた後、体育で運動した際に症状が誘発されるケースが多いです。
しかし、様々な運動により症状が誘発される可能性があるため、食物依存性運動誘発アナフィラキシーを発症したことがある方は注意が必要です。
発症に影響する要因
食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、抗原特異的IgEの関与する即時型反応とされています。
しかし、通常の即時型反応と異なり、特定の食物摂取と特異的IgE抗体と運動負荷が組み合わされば必ず発症する訳ではありません。
疲労や寝不足、ストレスなどの全身状態が良くないときや、気象条件や花粉飛散時期、アスピリンの内服などの複数の要因が関与すると言われています。
検査について
血液検査、皮膚テスト
病歴から食物依存性運動誘発アナフィラキシーが疑われる場合には、血液検査、皮膚テストを行います。
血液検査や皮膚テストの詳細については下記の記事をご参照ください。
特異的IgE抗体は約8割、皮膚テストは約9割が陽性になると言われています。
誘発試験
血液検査や皮膚テストから疑わしい食物に反応があった場合には、誘発試験を考慮します。
通常の食物経口負荷試験と異なり、 実際に食物を摂取してから運動することで症状が誘発されるかを確認する検査になります。
安全のため、誘発試験は食物経口負荷試験の経験が豊富なアレルギー専門施設で、入院での実施が望ましいとされています。
しかし、前述したように原因食物を摂取後に運動すれば必ず症状が出現される訳ではなく、複数の要因が関与しているため、誘発試験を行っても症状が出ない場合もあります。
生活指導について
食物依存性運動誘発アナフィラキシーが疑わしい場合には、運動前には原因食物を摂取しないように指導します。
具体的には食後最低2時間程度は運動を避けるように指導します。
しかし、原因食物を完全に除去する必要はなく、運動をしてはいけない訳ではないため、過剰な指導とならないように注意します。
症状出現時に備えて、エピペンや抗ヒスタミン薬の内服なども処方しておくことが必要になります。
まとめ
食物アレルギーの発症と予知と予防 : 食物アレルギー診療ガイドライン2012 ダイジェスト版
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