舌下免疫療法ってなに??喘息にも効果があるの??
小児科医として勤務しているdoctorKKと申します。
今回は『アレルゲン免疫療法について』の記事です。
<目次>
アレルゲン免疫療法とは
アレルゲン免疫療法とは「アレルギー疾患の病因アレルゲンを投与していくことにより、アレルゲンに暴露された場合に引き起こされる関連症状を緩和する治療法」と定義されています。
少し分かりづらいですね。
鳥居薬品のサイトが分かりやすくまとめているので引用させてもらいます。
アレルゲン免疫療法は、減感作療法とも呼ばれ、アレルギーの原因である「アレルゲン」を少量から投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげる治療法です。
アレルギー症状を治す可能性のある治療法と考えられています。
アレルギー症状のある疾患のうち、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息などに対してこの治療法が行われています。
上記にある通り、アレルギーのある疾患を治す可能性がある治療法になります。(※必ず治せる訳ではありません)
アレルゲン免疫療法を行うことで、様々な免疫学的反応が起こり、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといったアレルギー症状を緩和することができます。
しかし、年単位の治療が必要(3~5年程度)とされており、治療を開始してもすぐに効果が出るものではありません。
アレルゲン免疫療法には「皮下免疫療法」と「舌下免疫療法」の2つがあり、詳細について後述します。
アレルゲン免疫療法の詳細については、日本アレルギー学会のホームページ中にはアレルゲン免疫療法の手引きが載っており、誰でも閲覧することが可能です。
皮下免疫療法(SCIT)について
皮下免疫療法は英語で ”subcutaneous immunotherapy” であり、SCIT(読み方:スキット)と呼ばれています。
アトピー型喘息やアレルギー性鼻炎の患者さんに対し、アレルゲンをわずかな量から開始し、徐々に量を増加させながら注射し、過剰な免疫反応を弱めていき、症状を起こりにくくする治療法です。
皮下免疫療法は注射薬で行う治療になります。
そのため、毎日の治療継続は必要ありませんが、受診の度に注射を受ける必要があります。
具体的な治療の流れとしては、初めに採血または皮膚テストを行い、ダニに反応があるかどうかを調べます。
さらに、呼吸機能検査を行い、呼吸機能の低下がないかを調べます。(呼吸機能が低下していると副作用が出やすくなるため)
ダニへの反応があり、呼吸機能が問題ないことが確認できたら実際に治療を開始します。
治療の流れについては以下の通りです。
①低濃度のアレルゲンを少量から投与
⇒30分は副作用が出現しないか医療機関内で観察。30分後に注射部位の皮膚反応を測定。
②週1~2回受診し、皮膚の腫れが大きくなければ少しずつ量を多く、濃度を高くしていく
⇒目標濃度を維持量まで徐々に増量
③維持量となったら間隔をあけ、2週に1回、4週に1回としていく
日本アレルギー学会のホームページに皮下免疫療法についての記事があるため、合わせてご参照ください。
舌下免疫療法(SLIT)について
舌下免疫療法は英語で "sublingual immunotherapy" であり、SLIT(読み方:スリット) と呼ばれています。
アレルギー性鼻炎の患者さんに、アレルゲンをわずかな量から開始し、徐々に量を増加させながら投与し、過剰な免疫反応を弱めていき、症状を起こりにくくする治療法です。
舌下免疫療法は内服薬で行う治療になります。
そのため、自宅で毎日継続して治療(内服)を行う必要があります。
この点が皮下免疫療法と大きく異なります。
皮下免疫療法と同様に、ダニへ反応があるかどうかを調べ、症状と検査からダニを原因とするアレルギー性鼻炎と診断された方が治療対象となります。
治療の流れは以下の通りです。
①初回投与は医療機関で実施。投与時は舌下で崩壊するまで保持し、唾液で飲み込む。投与後5分間はうがいおよび飲食を控える。
⇒30分は副作用が出ないか医療機関内で観察。
②2回目からは自宅で投与。1日1回 舌下へ投与。
⇒徐々に薬剤量が増量されていき、維持量まで増量。
③維持量となったら、1日1回の舌下投与を継続。
⇒基本的には3年程度は継続が必要。
維持量までの増量期間は薬剤によって異なりますが、長期的に治療が必要なことは変わりません。
舌下免疫療法でよく使用されているものが
・鳥居薬品 ミティキュア®
・シオノギ製薬 アシテア®
になります。
それぞれの薬剤にはメリット、デメリットがあるため、詳細についてはそれぞれの製薬会社のホームページをご参照ください。
小児喘息に対するダニアレルゲン特異的免疫療法の有用性
以前の記事で小児気管支喘息患者に対して、ダニアレルゲン特異的免疫療法が有用である可能性について記事を書きました。
皮下免疫療法の検討では、喘息症状、頓用薬の使用、全身性ステロイド薬の使用、長期管理薬の使用量に対する改善効果が認められたが、医療機関受診回数や呼吸機能には有意差は認められなかった。
舌下免疫療法の検討では、喘息症状や呼吸機能に対する改善効果が認められたが、頓用薬の使用、全身性ステロイド薬の使用、長期管理薬の使用量には有意差は認められなかった。
舌下免疫療法では死亡例を含む副反応が報告されており、舌下免疫療法にも全身症状は少ないながら副反応が報告されている。
以上より、ダニアレルゲン特異的免疫療法には小児喘息に対する治療効果が期待でき、十分な注意を払った上でダニに感作された小児喘息に対する長期管理における標準治療の一つとすることを提案する。
[参考文献]
・足立雄一 他. 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020
となっています。
ガイドライン委員の中でも意見が分かれたようですが、今回のガイドラインでは標準治療として提案されています。
処方時の注意点としては、舌下免疫療法はアレルギー性鼻炎には適応がありますが、アトピー型喘息へは適応がありません。
まとめ
- アレルゲン免疫療法には皮下免疫療法と舌下免疫療法がある
- 年単位での治療継続が必要
- 皮下免疫療法は受診の度に注射することが必要
- 舌下免疫療法は毎日内服薬を飲み続けることが必要
- アレルゲン免疫療法により、アレルギー性鼻炎や気管支喘息の症状が改善することが期待できる
- 気管支喘息のみでは舌下免疫療法の適応はないが、アレルギー性鼻炎との合併時には治療が可能
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