食物経口負荷試験について
小児科医として勤務しているdoctorKKと申します。
今回は食物アレルギー診療では欠かせない『食物経口負荷試験』についてです。
<目次>
食物経口負荷試験とは?
食物アレルギーの診療を行う際に重要となってくるのが『食物経口負荷試験』です。
食物経口負荷試験って何なの?
と言いますと、分かりやすくお伝えすると「実際に食材を食べて、症状が出るかを確認する」試験になります。
厳密に言うとやや違う点もありますが、分かりやすくここではこのように表現させてもらいます。
では、具体的にどのように食物経口負荷試験を進めるかについてご紹介します。
実施可能な医療機関について
まず知っておいて頂きたいことは、食物経口負荷試験は実施できる医療機関が限られており、どこの病院でも行える訳ではありません。
何故かというと、実際にアレルギーの反応が起きるかもしれない食材を食べてもらうため、何か症状が出た際に適切な対応ができる設備や人員が必要になるからです。
そのため、自分が住んでいる地域で食物負荷試験を行っている病院がどこなのかを探す必要があります。
実施施設については下記のリンクから閲覧可能です。
食物経口負荷試験を行う病院へ受診をすると、担当の医師と負荷試験の日程や方法について相談することになります。
実際に行う方法については病院毎に少し異なりますが、これまでにどのような食材を食べてどのような症状が出たかといった問診や、血液検査や皮膚テスト等を行い、どの程度の負荷量にするかを決定していきます。
血液検査や皮膚テストだけでは食物アレルギーと診断することはできません。
(血液検査や皮膚テストのことについてはまた後日記事を書く予定です。)
負荷試験の実際
負荷量が決定したら、実際に食材を単回または複数回に分けて食べてもらい、症状が誘発されるかどうかを判定していきます。
複数回に分けて摂取する場合には、ガイドラインでは摂取間隔は15~30分、3~6回程度に分割して漸増摂取が望ましいとされています。
実施する施設や症例によっては上記のような方法ではなく、1時間毎に摂取してもらう場合もあります。
(例)
ゆで卵白:1-2-5g 30分毎
牛乳:5ml 単回
日帰り入院で行う場合が多いですが、重篤な症状(アナフィラキシー)が誘発されてしまった場合には1泊入院が必要なこともあります。
食材を摂取したあとは15分程度の間隔で診察を行い、アレルギー症状が誘発されていないかを確認します。
症状が誘発されなかった場合には、食材を摂取後2~3時間程度が経過した段階で負荷試験は終了になります。
これまでにアレルギー症状が出現したことがある時間を参考にして院内での経過観察の時間は調整します。
アレルギー症状が誘発されてしまった場合には、出現した症状と重症度に合わせた適切な対応を行います。
負荷試験の際に出現した症状により、摂取した食材を今後どのように摂取していくのかを決定していきます。
- 症状出現なし⇒負荷試験で摂取した量までは摂取可
- 症状出現あり⇒出現した症状により今後の対応を相談
症状が出なかった場合には、負荷試験で摂取した量を自宅で継続して食べてもらい、症状が誘発されないかを確認していきます。
症状が誘発されてしまった場合には、症状の程度にもよりますが、途中まで負荷した量を食べてもらう場合や、摂取した食材の除去を指示する場合もあります。
詳細は病院毎にやや異なりますが、大きな流れとしてはこのようになっています。
ちなみに、私が勤務している病院では、
- 単回摂取
- 30分毎に3回摂取
- 1時間毎に2回摂取
日帰り入院では上記のような方法で症例ごとに負荷量を設定して食物経口負荷試験を行っています。
また、外来で単回負荷も行っており、症状誘発のリスクなども考慮して、入院で行うか外来で行うかは決定しています。
食物経口負荷試験を検討されている方は参考にしてみてください。
参考になる資料
日頃から食物アレルギー患者の診療に使用しているものについて下記に記載しておきます。
『食物アレルギー診療ガイドライン2016』についてはやや専門的な内容が多いため、一般の方には読みづらいと思いますが、『保護者からの質問に質問に自信を持って答える 小児食物アレルギーQ&A』については一問一答の形式になっており、一般の方にも比較的読みやすいと思います。
食物アレルギーを持っているお子さんのことで悩まれる保護者の方は是非参考にしてみてください。
まとめ
≪関連する記事≫