doctorKK’s diary

小児科医として勤務しています。アレルギー関連のことや、医師の副業などについて記事を書いていきます。

アナフィラキシーって何??エピペンはいつ打てばいいの??

小児科医として勤務しているdoctorKKと申します。

今回は『エピペンの使用タイミング』についての記事です。

 

<目次>

  

アナフィラキシーとは

エピペンの説明の前に、アナフィラキシーについての説明をします。

アナフィラキシーとは、アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応と定義されています。

その中でも、アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合」アナフィラキシーショックと言います。

 

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アナフィラキシー診断基準 

  アナフィラキシーガイドラインより引用  https://anaphylaxis-guideline.jp/pdf/anaphylaxis_guideline.PDF

 

もう少し分かりやすく表現すると、アレルギー反応により複数の症状が出現した際にアナフィラキシーと判断します。

(厳密には異なりますが、このように理解してもらえると分かりやすいかと思います)

 

重要なのは「生命に危機を与え得る過敏反応」という点です。

そのため、アナフィラキシー早期に治療介入することが非常に重要になります。

 

治療について

アナフィラキシー発症時には体位変換をきっかけに急変する可能性があるため、急に座ったり立ち上がったりする動作を行わないことが重要になります。

仰臥位にし、下肢を挙上させることも重要です。

 

 ですが、一番重要なのは薬物治療であり、第一選択薬として使用されるのがアドレナリンになります。

 

アナフィラキシーと診断した場合または強く疑われる場合は大腿中央の前外側に0.1%アドレナリン 0.01mg/kgを直ちに筋肉注射します。(最大量:成人0.5mg、小児0.3mg)

 

アドレナリンの血中濃度は筋注後10分程度で最高になり、40分程度で半減するため、症状が続く場合は追加投与を検討します。

 

それ以外の薬物治療としては、抗ヒスタミン薬、β2受容体刺激薬の吸入、グルココルチコイドの投与などがありますが、アナフィラキシーの薬物治療としてはアドレナリンが最優先とされています。

 

アナフィラキシーで注意すべきなのは前述した「生命に危機を与え得る過敏反応」という点です。

繰り返しになりますが、アナフィラキシー早期に治療介入することが非常に重要になります。

 

病院へ搬送後は上記の通りアドレナリンを使用して治療を行いますが、自宅や学校等でアナフィラキシーになった場合に使用を推奨されるのが、後述するエピペン®になります。

 

エピペン®とは

エピペンとは、アナフィラキシー症状が出現してしまった際に症状の進行を一時的に緩和することが出来る注射薬剤です。

食物アレルギーがある患者さんには処方されていることが多いかと思います。

 

製薬会社が作成している『エピペンサイト』と呼ばれるエピペン使用について詳しく紹介しているサイトがあるため、エピペンを処方された方や医療関係者の方は是非ご覧になってください。 

 

www.epipen.jp

 

使い方

エピペンの使い方の詳細については下記のリンクをご参照頂きたいですが、使用する際に大事な点としては

  • カバーから取り出し、青色の安全キャップを外す
  • オレンジ色の先端を「カチッ」と音がするまで大腿の前外側部に垂直に強く押し付ける
  • 5秒間押しつけ注射する
  • 緊急時には衣服の上からでも可

 

上記の点に注意して使用してください。

 

www.epipen.jp

 

 

国立相模原病院が作成している資料がとても分かりやすいため、リンクを貼っておきます。

https://sagamihara.hosp.go.jp/pdf/iryo/supports_manual_allergic.pdf

 

 

エピペンを使用すべき症状

食物アレルギーのためにエピペンを処方してもらっている方は多くいます。

ですが、実際にアレルギー症状が出現した際に、エピペンを使用すべきどうかで悩むことは多いと思います。

 

下記の画像は日本小児アレルギー学会で推奨している、エピペンを使用すべき症状になります。

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「一般向けエピペン®の適応」|一般社団法人日本小児アレルギー学会

 よく保護者の方から質問を受けるのが、

 

「喉がイガイガする程度だが、エピペンを使用したほうが良いのか」

「身体に発疹が出てきたら、エピペンを使っても良いのか」

 

 上記のような質問を受けることがあります。

 

エピペンを使用すべき症状として「喉がイガイガする」「身体に発疹」といった症状は前述した一般向けのエピペンの適応には記載されていません。

 

しかし、私自身が保護者の方から上記のような質問を受けた際の答えとしては

 

「保護者の方から見て明らかに調子が悪そうだったら、迷わず使用してください」

 

明確な答えになっていないかもしれませんが、このように説明することが多いです。

 

もちろん、上記に記載してある一般向けエピペンの適応の症状が出現した際にはエピペンを使用すべきとも説明しています。

ですが、使用すべきタイミングや症状について細かく説明しすぎてしまうと、本来使用すべき時に使用することを躊躇してしまう場合が多々あります

 

エピペンを使用することによる副作用や有害事象がない訳ではありませんが、そこまで重篤な有害事象は報告されていません。

ですが、エピペンを使用すべき時に使用できなかった場合には、治療が遅れることにより重症化するリスクや、最悪の場合には亡くなってしまうこともあります

 

エピペンを躊躇して症状が悪くなってしまうよりも、エピペンを使用して重症化を防ぐことのほうが本人・家族にとっても重要と考えます。

 

アレルギーがある子をもつ保護者の方や、実際にエピペンを処方される先生は参考にして頂ければ幸いです。

 

※エピペンを使用した際には必ず医療機関を受診するようにしてください。

 

まとめ

  • アナフィラキシーが疑われる際にはエピペンを使用すべき
  • アレルギー症状が出現し、明らかに調子が悪そうだったら、迷わずエピペンを使用すべき

 

 

 

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