食物アレルギー診断のための検査
小児科医として勤務しているdoctorKKと申します。
今回は『食物アレルギー診断のための検査』についてです。
食物アレルギーとは
食物アレルギーとは「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義されています。
少し分かりづらいですね。
分かりやすく表現すると、「ある特定の食材を食べると、身体が反応して何らかの症状が出てしまうこと」です。
「ある特定の食材ってどんなもの?」と言いますと、個人個人で反応してしまう可能性がある食材は異なり、様々な食材に反応する可能性があります。
「じゃあ食物アレルギーがあるか調べるにはどうしたらいいの?」
この疑問を持たれる方が多いかと思いますので、食物アレルギーの診断方法について後述していきます。
食物アレルギーの診断方法は?
ここでは食物アレルギーの診断方法についてご紹介します。
以前の記事で、食物アレルギーの診断には食物経口負荷試験が重要であるといった記事を書きました。
食物経口負荷試験が食物アレルギー診療を行う上で重要であることは間違いありません。
しかし、 食物経口負荷試験を行う前段階で重要になることや、検査等で調べていくことがあるため、順番にご紹介します。
問診
はじめに行う問診がとても重要です。
「話を聞くだけで分かるの?」と思われるかもしれませんが、問診は食物アレルギーの診断をする際にはとても参考になります。
保護者の方からの問診表への記載としてよく見かけるのが
「卵を食べたら身体が赤くなり、食物アレルギーが心配」
このように問診表へ記載される方が多いです。
もちろんこの情報もとても重要ですが、さらに詳細な情報を問診することが、食物アレルギー診断には重要になります。
具体的には
- 出現した症状の詳細
- 食材の調理形態
- 摂取量
- 食物を摂取してから知症状出現までの時間
- 家族歴
- 再現性があるのか
- これまでに食べたことがある食材
- 皮膚の状態
- 内服薬の状況
- 症状出現前後に運動したか etc
これらの項目について保護者の方から詳細に問診を行います。
詳細な問診を行うことで、その患者さんの症状が食物アレルギーなのかを判断し、食物アレルギーであれば負荷試験をどのように設定していくのかを考えていきます。
乳児期に1回摂取して軽度の症状が出現しただけの場合には食物アレルギーではない可能性があります。
しかし、同じ食材を複数回摂取し、摂取の度に同様の症状が出現する場合には食物アレルギーの可能性が高くなります。
問診内容から食物アレルギーが疑われる食材に関しては追加で検査を行っていきます。
追加の検査としては血液検査、皮膚テスト等があり、順番にご紹介していきます。
血液検査
血液検査では、食物アレルギーが疑われる食材に対する『特異的IgE抗体検査』を行います。
特異的IgE抗体ってなに?
と言いますと、分かりやすく表現すると『特定の食材に対して、身体が反応するかどうかを血液検査で調べるもの』です。
(※厳密にはやや異なる点もありますが、分かりやすくこのように表現しておきます。)
特異的IgE抗体検査の結果で、特定の食材に対して身体が反応している場合には、どの程度身体が反応しているかを数値化したものが結果として得られます。
具体的には
クラス0(身体が反応していない)~クラス6(身体が強く反応している)
の段階に分類されます。
検査結果で クラス6が出た食材としては食物アレルギーの症状が出る可能性がとても高いと言えます。
しかし、ここで注意して頂きたいのは、検査結果でクラス0であったとしても、実際に食材を摂取すると食物アレルギーの症状が出てしまう可能性があるという点です。
え? 血液検査で食物アレルギーか分かるんじゃないの?
と思われるかもしれませんが、食物アレルギーがあるかどうかの最終的な判断については、前述した食物経口負荷試験で判断します。
じゃあ何のために検査するの? と言いますと、
血液検査結果から、食物アレルギーの症状が誘発されてしまうかをどうかを、ある程度予測することができるからです。
どのように予測するかと言うと、プロバビリティカーブと呼ばれるものを使用して予測します。
やや専門的になるため、ここでは詳しくは記載しませんが、興味のある方は下記のリンクを参照してください。
血液検査で特定の食材に反応があった場合、最終的には食物経口負荷試験を行い、食物アレルギーの有無を評価していきます。
血液検査以外に食物アレルギー診断の際に行う検査として皮膚テストがあります。
皮膚テスト
皮膚テストでは『皮膚プリックテスト』がよく行われます。
皮膚に市販のアレルゲン液を滴下し、出血しない程度にプリック針で皮膚を穿刺し、反応があるかをみる検査になります。
実際の方法としては上記の写真のように行い、判定を行います。
15分後に膨疹や紅斑の大きさを測定し、特定の食材へ反応があるかを判定します。
比較的簡便に行えて、結果もすぐ判明するため、食物アレルギー診療を行う上ではとても有用な検査になります。
しかし、ここでも注意して頂きたいことは、皮膚プリックテストで反応があったとしても、実際に食材を摂取すると食物アレルギーの症状が出ないことがあるということです。
血液検査の項目と同じような内容になりますが、最終的に食物アレルギーの有無について食物経口負荷試験で評価します。
最終的には、いくつかの検査を組み合わせて症状出現のリスクについて予測し、食物経口負荷試験を行っていきながら食物アレルギーの診療を行っていきます。
今回の記事のまとめ
- 食物アレルギーの診断には問診が重要
- 血液検査、皮膚検査も参考にするが、最終的には食物経口負荷試験で食物アレルギーの有無の判断をする